【車載動画付】肥薩線の不通区間を巡る(後半: 人吉・吉松駅間)【被害軽微も復旧できず】

JR九州の肥薩線の不通区間(八代・吉松駅間)を巡る企画で今回はその後半、「山線」と呼ばれる人吉・吉松駅間を巡ります。令和2年7月豪雨による目立った被害は1箇所のみにもかかわらず、約3年にわたり運転見合わせとなっています。この区間は日本三大車窓のひとつである矢岳越えや、大正・昭和時代にタイムスリップできるような無人駅があるなど、観光的には魅力の多い区間となっていますが、経営的には厳しい線区となっています。被災前のダイヤ体系を見ても、通学利用がないことを前提としたダイヤとなっており、近年はほぼ専ら観光路線としての位置づけとなっている印象です。 本動画では当該区間の駅と沿線を巡りつつ、肥薩線の観光需要の観点から、鉄道復旧の可能性を見ていきます。また、前半と同じく、各種データの紹介も行っています。 【目次】 0:00 人吉駅を出発/肥薩線山線区間の概要 3:34 大畑駅 5:57 肥薩線山線区間の運行体系 8:24 矢岳駅/人吉市SL展示館 14:27 真幸駅 16:57 肥薩線の黒字運行にはどの程度の観光客が必要か 20:02 吉松駅 【解説: 肥薩線の黒字運行にはどの程度の観光客が必要か】 ※手元のメモを貼り付けただけなので、少し乱雑ですが… ① 八代 – 人吉 ・八代・人吉駅間の輸送密度は414人。 ・全体の利用のうち、観光利用は5割、ビジネス利用は3割、地元利用(通学利用等)は2割(C)。 途中区間の人口が希薄であることを鑑みると、観光・ビジネス利用にあたる8割のうち、途中駅での乗車・下車は僅かであることが考えられる。そのため、該当区間利用者のうち、少なくとも8割は八代・人吉駅間を全区間通しで利用するものと仮定する(本段落の前提をDとする)。 地元利用の2割は高校生による通学定期利用とみなす。主な利用は八代・坂本駅間(11km・6ヶ月定期31,970円)(a)、一勝地・人吉駅間(12km・6ヶ月定期32,730円)(b)、渡・人吉駅間(6.5km・6ヶ月定期23,580円)(c)が多いことから、便宜上、この3パターンのみで考える(定期代は若干の誤差の可能性あり)。計算の便宜上と、割引率が低い6ヶ月定期券以外の利用などの可能性を鑑み、1人あたりの定期代を半年あたり30,000円と仮定し、八代・人吉駅間の距離のうち、2割の距離を利用したものとする(本段落の前提条件をEとする)。 まずは上記を前提とし、八代・人吉駅間の252百万円のだいたいの内訳を予測する。 輸送密度は先述の通り、「どの区間でも人数が同じになるように利用者の乗車距離を並べなおし、平均の数字を見る」ものであるから、上記Dより、以下の通り、331人は全区間利用とみなすことができる。 414×0.8≒331 (人) 一方で、残りの輸送密度83人分(414-331=83)については地元利用(=区間利用)とみなすことができる。しかし、この値は全区間利用した人数に換算されているため、上記Eの前提に準拠とし、地元利用者の人数をxとすると以下の通り、求めることができる。 0.2x=83 x=415 ∴ 地元利用者は延べ415人となる。 さらに、上記Eに準拠し、地元利用者による年間の運賃収入を求めると下記の通りとなる。尚、地元利用者は全員往復利用を前提とするため、重複利用を除くと、地元利用者は207人となる(端数は切り捨てた) ※ここでは特急列車は利用しないものと仮定する。 @30,000×(12÷6)×207=12,420,000 (円) ∴ 地元利用者による運賃収入は12百万円と予測できる。 よって、定期外利用(観光・ビジネス利用)が残りの内訳を占めるが、さらに内訳を求めていく。特急料金を除く、運賃部分については八代・人吉駅間の運賃が1,130円のため、年間の収入は以下の通りとなる。 @1,130×331×365=136,520,950 (円) ∴ 定期外利用(観光・ビジネス利用)による運賃収入(特急料金を除く)は137百万円と予測できる。 また、特急料金による収入も求める。被災前の運行体系では「かわせみ」「やませみ」号が3往復(=6本)、「いさぶろう」「しんぺい」号が1往復(=2本)、「かわせみ」「やませみ」号の座席定員は通常時において、1編成あたり74席、「いさぶろう」「しんぺい」号の座席定員は通常時において、1編成あたり95席。全員が指定席を利用したとし、八代・人吉駅間の特急料金を1,500円(JR九州の同程度の距離における指定席特急料金を参照した)、また、平均着席率を全座席の3割と仮定すると以下の通りとなる。 @1,500×{(74×6×30%)+(95×2×30%)}×365=104,134,500 (円) ∴定期外利用(観光・ビジネス利用)による運賃収入(特急料金を除く)は104百万円と予測できる。 一度ここまでの過程をまとめると、営業収益の内訳は以下であることが予測できる。 ・地元利用者による運賃収入: 12百万円 ・定期外利用(観光・ビジネス利用)による運賃収入(特急料金を除く)は137百万円 ・定期外利用(観光・ビジネス利用)による運賃収入(特急料金を除く)は104百万円 (上記の内訳をFとする) 以上を合計すると253百万円となり、実際の営業収益252百万円と近く、推定として、一定の妥当性はあるものと思われる。 また、上記Dより、定期外利用(観光・ビジネス利用)は331人と算定したため、上記Cより年間の観光利用者は下記の通りと予測できる。 331×5/8×365≒7.55万(人) (G) また、上記Fを、上記Cに基づいて処理すると、年間の観光客による運賃収入(特急料金を含む)は以下の通りとなる。 (137百万+104百万)×5/8≒151百万円 (H) よって、GをHで除して、一人あたりの観光客からの運賃収入(特急料金を含む)は2,000円となる。 該当区間の地元利用、ならびにビジネス利用の増減がない、また、該当区間の営業費用に変化がないと仮定した場合、八代・人吉駅間の損益分岐点に達するための観光客の人数を求めると以下の通りとなる。(営業収益の値は実際の値を利用する) [873百万-{252百万-12百万-(241百万-151百万)}]÷2,000=361,500 (人) ∴観光需要だけで八代・人吉駅間の損益分岐点に達するようにするには年間361,500人の集客が必要。日あたりでは約990人。 ② 人吉・吉松駅間 ・人吉・吉松駅間の輸送密度は106人 輸送密度は「どの区間でも人数が同じになるように利用者の乗車距離を並べなおし、平均の数字を見る」もの。 ∴ 人吉・吉松駅間では106人が全区間を乗車しているのに等しい人数の利用がある。 県境に近いうえ、朝の時間帯の運行がなかったことを考えると、定期利用はゼロ。転じて、途中駅の利用はゼロとみなすと(…A)、人吉・吉松駅間で1日平均106人が利用していることみなせる。 年間の利用者数に直すと、 106×365=38,690 (人) 現在の営業収益をもとに、1人あたりの営業収益を計算すると、 58百万円/38,690≒1,500 (円) (…B) (※人吉・吉松駅間の運賃は760円、指定席料金は530円のため、運賃収入以外の収益も出ている可能性があるが、ここでは無視する) 現状の営業費用は328百万円であるため、これをBで割ると、 328百万円/1,500≒218,700 (人) ∴ 損益分岐点に達するには年間約218,700人の観光客が必要。1日あたりに換算すると600人となる。 しかし、以下の考え方を元にすると、上記の人数は人吉・吉松駅間における被災前の運行状況の場合、最大輸送人員(624人/日)近くの人数に達し、運転本数や両数の増強等を行う必要があることが予想される。故に、営業費用を積み増す必要があると考えられ、実際はこれ以上の人数が必要となる可能性が高い。 (参考: 通常運転状況下における最大輸送人員) 被災直前の運行体制における最大輸送人員を求める。人吉・吉松駅間においては「いさぶろう」・「しんぺい」号が2往復(=4本)、普通列車が1往復(=2本)である。また、「いさぶろう」・「しんぺい」号は指定席が88席、自由席が7席、普通列車がキハ200系の場合、1両あたりの定員が122人で、1両編成での運行と考えた場合、最大輸送人員は以下のように求められる。 ・「いさぶろう」「しんぺい」号: (88+7)×4=380人/日 ・普通列車(キハ200): 122×2=244人/日 ∴ 1日における最大輸送人員は624人。 【主な参考】 ・鉄道プレスネット - 鉄道の指標「輸送密度」とは ローカル線の廃止基準、分かりやすいが課題も https://news.railway-pressnet.com/arc... ・旅行総合研究所タビリス - JR九州ローカル線の2019年度線区別収支。肥薩線は赤字12億円 https://tabiris.com/archives/jrqsenku... ・JR九州 - D&S列車の旅 特急いさぶろう・しんぺい https://www.jrkyushu.co.jp/trains/isa...

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