キミの影が伸びる頃

三階の廊下から 体育館の音が跳ねた 窓に映る夏服が 少しだけ大人に見えた 階段の踊り場で ほどけた靴ひも結び直す その横を通る風まで なぜか名前を持っていた 呼び方ひとつで 距離が変わりそうで 飲みかけの炭酸を 胸の奥で鳴らしてる キミの影が伸びる頃 放課後が少し青くなる 言えないままの何かだけ ポケットの中で光ってる 追いかけてるわけじゃない たぶんそれに近いだけ 君の背中が曲がる角を 今日も見つめてしまった 部室の前に置いた 渡せなかった差し入れは 汗をかいたペットボトル みたいに少し震えてた 黒板のすみっこに 誰かが描いた星マーク 消される前の一瞬が やけにまぶしく見えた 目が合っただけで チャイムが遅れて聞こえる 平気な顔の練習を 夕焼けに見られてた キミの影が伸びる頃 自転車置き場が静かになる 言えないままの何かだけ 制服の袖で揺れている 好きと呼ぶには早すぎて 憧れだけじゃ足りなくて 君が笑ったその秒針を 何度も巻き戻してる 卒業の話を 誰かがふいにした午後 桜より先に 胸の奥が散らかった 追いつけない季節ほど 綺麗に見えるのは たぶん少しだけ ずるい魔法だ キミの影が伸びる頃 放課後が少し青くなる 言えないままの何かだけ ポケットの中で光ってる 追いかけてるわけじゃない たぶんそれに近いだけ 君の背中が曲がる角を 今日も見つめてしまった キミの影が消える頃 空はもう夜の手前で 名前のないこの気持ちを まだ明日にしまっておく