グラスゆらす

rtor / グラスゆらす 大学の学園祭には、毎年似たような風景がある。 焼きそばの匂い。少し安っぽいステージ。飲みかけの紙コップ。夕暮れに染まる校舎。そして、もう二度と戻らない時間。 「グラスゆらす」は、そんな一日の終わりを切り取った曲だ。 別に何か特別な出来事があったわけじゃない。 好きだった人がいたかもしれないし、いなかったかもしれない。ライブは成功だったかもしれないし、失敗だったかもしれない。 だけど、沈みかけた太陽の下で誰かが掲げたグラスだけは、なぜか記憶に残っている。 ギターは夕焼けの色をまといながら鳴り続ける。歓声は少しずつ遠ざかり、空だけが必要以上に大きくなっていく。 気がつけば祭りは終わる。 屋台は片付けられ、ステージは静かになり、人はそれぞれの日常へ帰っていく。 それでも、あの日の空の色だけは忘れられない。 「グラスゆらす」は青春の歌ではない。 青春が終わったあとも、ときどき思い出してしまう夕暮れのための歌だ。 誰かと乾杯した記憶ではなく、乾杯する前の期待感。 その一瞬の輝きを、rtorらしい轟音とメロディで閉じ込めた。