117回目の出航 2026.05.14

2014年12月23日    愛媛新聞 朝刊 掲載分  自分を探している時代に購入して大事にしている本がある。厚さ5センチほどある「造園技術」関口鍈太郎著である。意を決して購入した思い出の書籍である。  学生時代あまり深く就職のことを考えないまま林学科に進んだ。高知の山野をめぐる実習はずいぶんと楽しかった。しかし、社会では林業・製材業などは、すでに斜陽産業となっていた。  それはそうだろう。新たに苗を植えて、利用できるのは40年を越えてしまう。そのころ木材のライバルはプラスチックだった。プラは軽く、ひずまず、単価も安い。かないっこなかった。  就職については、ずいぶんと考えたが、30歳には独立起業をすること、そのために、これから伸びるであろう業種を探すこと、この2点に絞って3回生の終わりには方向を出す計画とした。  3回生の夏休み前に重要な情報を得た。親友の話では福岡に造園業では日本一の会社があり、友人の父はその会社の協力業者であることを知った。これだ!と思った。   グリーンビジネスという業種を見つけた瞬間であった。早速、その夏休み、友が帰省するのを狙って、一緒に福岡の田主丸というところへ、ホームステイするよう段取りをしてもらった。  友の家ではずいぶん歓待していただいた。田主丸は全国的に植木で有名な産地であり、日本で一番大きいという造園会社もそばにあった。  そこの会社に「つて」で訪問させてもらった。そこで偶然愛媛大学出身の方が、社員として勤められており対応していただいた。しかしなぜか、その方も含め会社の雰囲気にまったく馴染めなかった。理由は感覚的に合わないとしか言えない。給料をもらう側と出す側の論理が解せなかった。  「会社とは公器ではなく、私的で傲慢なところが多いのではないか」。  日本一の造園会社、若き経営者、成功の証としての高級車、へりくだった協力業者などが、青臭い経験もない頭では受け入れられなかった。  いつかは、自分が良いと思う組織(造園設計会社)を作ってやろうじゃないか。  その決意の現れが、冒頭の技術書である。定価2800円もした。今の感覚では3万円はする。3度本屋を行き来してついに買った。社会に打って出る武器だと思った。