smile

朝の6時半 山の手前から昇る太陽 いつものインカムを頭にハメて 私の1日が動き出す タイマーの音が慌ただしく響くフロア 昨日怒っちゃったバイトの顔を覗き込みながら ふと思う 「私、いつの間にこんな大人になっちゃったんだろ」 恋だの愛だのの優先順位は とうに最下位で 今週のシフトの穴埋めと あのレコードのことばかり考えている 独り身の気楽さを言い訳にして 冷たいコーラを飲み干した 切ないくらいに晴れた朝 海沿いのこの街の 小さなカウンターから お腹を空かせた誰かのために 今日も灯りをともしている あの日の恋みたいに 揺れた黄金色のポテトを 抱きしめて離さないように 届けたいんだよ 「ありがとう」って笑うあの子の笑顔に 本当は私が 救われているんだよな 夕暮れ5時 窓の外はだらしなく茜色 海の匂いが混ざった風が ドライブスルーを通り抜けていく 自転車を押して帰る高校生も 手を繋ぐ親子も みんなの「いつもの場所」を守るのが 私の役目 自分のための恋バナなんて いつからしてないっけ 夜の10時 最後のモップ掛けを終えて 誰もいなくなった客席の真ん中に ぽつんと座ってみる 窓の外、パーキングの片隅で 寂しそうに揺れてる マリーゴールドが見えた 海と山に挟まれた この小さな街の店で 私は私の居場所を ちゃんと守れているかな 可愛げのある年齢でもないけれど みんなの前ではさ やっぱり頼れる人でいたいから 私服に着替えて 夜空を見上げる 足元には優しく香る マリーゴールド 明日もきっと 目が回るほど忙しくなる この街のど真ん中で いつまでも、いつまでも 最高のスマイルを届けるよ