月影硝子|Tsukikage Garasu

白い靴跡が夜に溶ける頃、 月だけが硝子に滲んでいた 【月影硝子】 静かな鐘が 夜をほどく 眠らない窓に 月が滲む 白い靴先 揃えたままで 誰にも触れない 息をしまった 月を映した硝子の庭 白い靴跡 風が消してゆく ほどけた靴紐 指先で結び 鏡の奥を 覗き込んでいた 花びら一枚 肩へ落ちても 振り向くことだけ できなかった あと少しだけ この夜を歩こう 白い息が 月へ溶けていく 揺れる花びら 袖口に残る 白い靴音が 夜を渡ってゆく 拾えない花びらを 両手で隠したまま 硝子の向こう側へ もう一歩だけ Ah... 鐘が響く Ah... 月が揺れる Ah... ほどけた靴紐 まだ結ばない 鏡の奥に眠る季節 微かな鼓動だけ響いてる 閉じ込めた昨日の欠片 指先ですべり落ちた 曇った硝子を 袖でなぞれば 映る横顔だけ 少し大人びていた 白い靴跡は もう見えなくて 花びらが 風に踊った 遠回りでも ほどけないなら 白い息が 夜空へ浮かんでく 濡れた花びらが 風に揺れてる 鐘の余韻が 胸に残ってる 欠けた鏡越し そっと微笑めば 月だけが 硝子に滲む 降り積もる時間の中 閉じた硝子へ 指先で輪を描く 白い花びらが 一枚 また一枚 鐘の音が 遠く響いて 目を閉じても 消えない月明かり 花びらひとつ 靴先に触れる 硝子の雫が 静かに零れてく ほどけた靴紐は 結び直さないまま 鐘の向こうへ そっと歩き出す 鐘が鳴るたび 白い息は溶け 月だけが 硝子に滲む 風が止むころ 白い靴跡も 夜に溶けてゆく 花びらは 夜へ帰ってゆく 月だけが 硝子に滲む 鐘がひとつ 静かに鳴った