ベンチャーズの「タブー」をオリジナルと聴き比べてみる

①ベンチャーズの「タブー」(1999年5月発売のCD「ベンチャーズ・イン・ザ・ヴォールツ第2集」より)0:00~ ②アーサー・ライマンの「タブー」(1958年6月発売のアルバム「タブー」より)2:47~  ベンチャーズの未発表曲やアルバム未収録曲などレアな音源を集めた英国エース・レコードのCD「イン・ザ・ヴォールツ」シリーズは全5巻のセットですが、その第2集に「タブー」という素晴らしい傑作が収録されています。  「タブー」はキューバ出身のソプラノ歌手でソングライターのマルガリータ・レクオーナが1930年代に作曲したラテン音楽で、ルンバやマンボ以外にもジャズやボサノバ、イージーリスニングなどあらゆるジャンルのミュージシャンにより様々なアレンジでカバーされているスタンダート・ナンバーです。最も有名なカバーは1957年にリリースされたペレス・プラード楽団のバージョンでしょう。非常に官能的なメロディであることから日本ではストリップのBGMとしてもおなじみで、ドリフターズの「8時だ!全員集合」のコントでもよく使われていました。  しかし、ベンチャーズがカバーしたのはペレス・プラードのバージョンではなく、ハワイ出身のヴィブラフォン奏者で、“エキゾチカ”(エキゾチック・ミュージック)という音楽ジャンルを創設したミュージシャンの一人であるアーサー・ライマンが1958年にリリースしたバージョンでした。“エキゾチカ” とは南国の楽園をイメージさせるようなムード音楽の一種で、その名前はピアニストのマーティン・デニーが1956年に発表した同名のアルバムに由来するとされています。  元々マーティン・デニーのバンドに所属していたアーサー・ライマンが独立して自らのバンドを結成後、初めてリリースした記念すべきデビュー曲が「タブー」であり、同名のアルバムは最高6位で1年以上チャートに留まり、最終的には200万枚以上を売り上げました。タイトル曲は1959年7月にビルボード・ホット100で最高55位を記録しています。  ベンチャーズは1962年の6月~8月にかけて8枚目のアルバム「ゴーイング・トゥ・ダンスパーティー」のレコーディングを行っていますが、「タブー」はそれらの収録が終わった後の同年9月4日にハリウッドのリバティ・カスタム・レコーダーズ・スタジオで録音されました。  この時期、リードギタリストのノーキー・エドワーズは友人のギタリストのジーン・モールズと組んでマークスメンという別バンドを立ち上げ、一時的にベンチャーズを離れていたので、バンドの共同オーナーであるドンとボブはノーキーのかわりに “レッキング・クルー” のトップ・ギタリストを適宜メンバーに加えてレコーディングを行っていました。  「タブー」のレコーディングに呼ばれた “レッキング・クルー” のメンバーはアルバム「マッシュポテト&グレイヴィー」と「ゴーイング・トゥ・ダンスパーティー」のレコーディングにも参加したビリー・ストレンジとデビッド・ゲイツに加えて “ミスター・テレキャスター” ことジェームズ・バートンまで参加するという豪華な陣容です。  アルバム制作ではギターを担当したデビット・ゲイツがボブ・ボーグルの代わりにベースを担当し、メル・テイラーのドラムとリズム隊を編成、ビリー・ストレンジとジェームス・バートンとボブの3人がリードギターを弾くという夢のような組み合わせです。3本のギターが高音、中音、低音を巧みに弾き分け、それらが混然一体となって紡ぎ出すミステリアスなメロディは聴く者を遠い異国のジャングルの奥にある桃源郷へといざなうことでしょう。  このような素晴らしい音源がなぜアルバムにも収録されずに長い間放置されていたのか全くの謎ですが、これは間違いなくベンチャーズの至高の名演の一つといっても過言ではなく、狭いスタジオで超一流の素晴らしいギタリストたちが一糸乱れぬ演奏を繰り広げる様子が目に浮かぶようです。 #TheVentures #Taboo #ArthurLyman ■■ これまでにアップロードした動画の再生リスト■■    • ベンチャーズの名曲をオリジナルと聴き比べてみる