菅野由弘 / 遠雷の時Ⅱ (1999年)
《遠雷の時Ⅱ》(初演) 菅野由弘作曲 演奏:現代邦楽研究所 三味線Ⅰ:杵屋勝芳寿 野澤徹也 三味線Ⅱ:西潟昭子 尺八:中村明一 山口賢治 箏Ⅰ:石垣清美 箏Ⅱ:福永千恵子 打楽器:山口恭範 雷が近づいてくる。 徐々に「ビカッ」と「ゴロゴロ」の間隔が短くなり、最後は「ビカッゴロゴロ」になる。 ここまで来ると雷は恐ろしいものだが、ビカッと光ってからゴロゴロまで、ゆっくり10以上数えられるくらい時間があるとき、雷は遠くのにぎわいだ。 そんな賑やかな雷たちの中に飛び込んだような曲、と思いながら作出の筆を進めた。 ここまでが「遠雷の時Ⅰ」のプログラムノートである。 「遠雷の時」はもともと、現代邦楽研究所の最初の「終了演奏会」のお祝いに、色々なレベルの人が集いつつ演奏するように、と思って書いた曲である。 パートによつて音楽的重要度が変わるわけではないが、明らかに技術的にレベルの異なる人々が「一堂に会する」ことは、普通の作品では不可能だ。 しかし、技術レベルが低くてもハイレベルの人たちと一緒に演奏してみたい、という夢は、当然誰もが持っている。 そんなことから、この曲は生まれた。(「遠雷の時 I 」・1995年現代邦楽研究所委嘱) さて、今回の杵屋勝芳寿さんのご依頼の越旨は、更にそれに超ハイレベル、つまりソリスト級の人も一緒に演奏できる曲はできないか、というもの。 レベルにして3段階、ハテサテ。 しかし書きながら、これは意外に面白いかも知れない、と思い始めた。 もちろん杵屋勝芳寿さんの、若い人も皆一緒の舞台に立てるように、という暖かい心を共有する喜びが先ず第一だったが、音楽的にも面白いかも知れない。 我々は通常、どのパートも全身全霊を込めて書く。 少なくともどこかのパートを手抜きで書く、というようなことは当然ながら無い。 かくして「全身全霊」のぶつかり合い、のような曲が出来上がってくる。 これが常道だが、今回の場合は「全パ一ト全身全霊」が許されない。 ここで、ふっと肩から力が抜ける。 作曲中ずーっと肩肘張っているわけではないが、ここでは強制的に力を抜かされるわけだ。 結構面白い体験であった。 その結果がどう出るかは、本日初演なので、お開きいただいた皆様の判定に任されることになる。演奏家の方々が楽しんで弾き、それを楽しんで聞いていただければ幸いである。 曲は、ソリストどおしが火化を散らす瞬間とアンサンブルの交代で進行し、次第に且つ自然に速度を増して行く形になっている。 元々日本の伝統音楽が持っている「興が乗れば自然に早くなる」スタイルを、作品の中に取り入れたいと思って、このような運びにした。 これが気持ちよく少しずつ速くなれるか、興が乗ってくるかどうかは、演奏家達と、お客様の微妙な連携によるところが大きい。 これだけは、誰か一人が引っ張るのではなく、会場全体で作って行くものである。 その意味で聴衆の皆様に、演奏家達を引っ張り上げていただければ、と願う次第である。 1999年、杵屋勝芳寿委嘱。 1999年11月26日、東京・日本橋劇場にて「杵屋勝芳寿リサイタル」で現代邦楽研究所が初演。(菅野由弘) ================================ ▼レッスン、演奏のご依頼はこちらから🔽 [email protected] ================================ #三味線 #箏 #尺八

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