ビューティフルサンデー ケーナによる演奏

1975年(昭和50年)に大学進学のために上京した。身を置いたのは、西早稲田にあった賄い付きの下宿屋であった。生アジを買ってきて開きにして道ばたに干しているようなせこい下宿屋であった。それを聴けば、どのような食事であったかは、推して知るべしだろう。今でも、小麦粉のたくさん入った白いカレーが思い出される。 街に出てみると,人が多く喧噪の坩堝といった感じだった。田舎から出てきた者には、なんともやかましい街だった。高田の馬場の駅のホームからは、裸の人形が音を立てて騒がしく回っているのを目にすることができた。海賊が裸の女を追いかけてぐるぐる回っているのだ。  駅から下宿屋まで歩いて行く途中に、五木寛之の青春の門にも出てくる「らんぶる」という名曲喫茶を見つけては感動していた。なんか、怪しい雰囲気があったので、入ることはなかった。  早稲田松竹という映画館では、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンのヒマワリが上映されていた。映画は感動したが、スクリーンの下にはなにやら動き回る影が見えた。そう、ネズミである。そんな映画館だった。 日曜日は食事が出ないので、駅の方へ歩いて行った。すると、ビックボックスという大きな建物があったので入ってみた。なんの建物なのかは、今もって知らない。  そこで不思議な女性に出会った。20代の若い女性なんだろうが、容姿は全く覚えていない。覚えているのは、不思議なイヤリングをしていることだった。耳から金色の鎖が肩まで伸びていて、肩先に生きたインコが乗っているのだ。へえ、東京にはいろんな人がいるもんだなあと驚いていると、彼女は、自分で付けていたのかそこにあったのかは知らないが、ヘッドフォンを私の耳につけてくれたのだ。その間、何らかの会話があったのかどうかは覚えていない。そのとき、耳に飛び込んできた音楽が、このビューティサンデーという曲であった。英語だったか日本語であったか、それすら覚えていないが、体に電流が走るような衝撃を感じた。 そんな、懐かしい曲なのだ。今では見向きもされない曲だと思うが。