日本精神神経学会に精神科医がいってきた。

はい、こんばんは。精神科医の芳賀高浩です。 今日はこの格好で失礼します。皆さん、これを見てください。 「第122回日本精神神経学会学術総会、クリニック中野、芳賀高浩」と書かれたネームプレートです。 今日は、このネームプレートをつけて、ジャケットを羽織って、日本精神神経学会の総会に参加してまいりました。 何のために行ったかというと、SNSに関するシンポジウムに参加するためです。 シンポジウム62、「精神神経学会とソーシャルメディア利用促進に関する諸問題」というテーマでした。 これは、私も参加している日本精神神経学会の広報委員会が主催するシンポジウムです。精神科医や精神医学に関わる人たちが、ソーシャルメディアをどのように使っていくのか、情報発信をどう考えるのか、そういったことを議論する場でした。 登壇された先生方も非常に豪華でした。 国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生は、「効果的な情報発信とは」というテーマで、非常に興味深いお話をされていました。 松崎朝樹先生は、「精神科医YouTuberが見つめる社会、ソーシャルメディアの光と影」というような内容でお話をされていました。 増田裕介先生は、炎上対策や視聴者数の伸ばし方、さらにSNSは結局コミュニティである、というお話をされていました。 そして指定発言者として、本田秀夫先生も参加されていました。 前半はシンポジストの先生方の発表があり、後半は会場からの質問に対して、登壇者の先生方が答えていくという構成でした。 発表自体はとても面白かったです。 松本先生のお話はやはり非常に引き込まれましたし、松崎先生のお話も、精神科医YouTuberとしての経験が詰まっていました。増田先生のお話も、AIやSNS上のコミュニティのあり方など、今後を考える上で示唆に富む内容でした。 ただ、後半の質疑応答については、正直に言うと、私はかなりモヤモヤしました。 シンポジウムの良さというのは、シンポジスト同士がそれぞれの立場から意見を出し合い、議論が深まっていくところにあると思うんです。 ですから、質問もできれば一人の登壇者だけに向けるのではなく、複数の先生方がそれぞれの立場から答えられるようなものの方が、場としては面白くなります。 ところが、会場から出た質問は、どちらかというと「SNSで問題のある発信をしている人がいたら、学会としてどう罰則を与えるのか」「学会としてどうチェックするのか」といった方向のものが多かった印象でした。 もちろん、医師の情報発信には責任があります。 不適切な発信や、医学的に誤った発信に対して問題意識を持つことは大切です。 ただ、日本精神神経学会というのは、基本的には学術団体です。精神医学について研究し、発表し、議論し、理解を深めていく場です。何か問題を起こした会員に対して、すぐに罰則を与えるための組織ではありません。 にもかかわらず、質疑応答がかなり「取り締まり」や「処罰」の話に寄ってしまっていたように感じました。 そのため、せっかくSNSで実際に発信している先生方が登壇しているのに、発信者としての実感や、悩みや、葛藤が十分に語られないまま進んでしまったように見えました。 そこで、私は質問をしました。 登壇者の先生方は皆さん、何らかの形で発信をされている方です。 SNSで発信する人が一番気にする問題の一つに、やはり炎上があります。 炎上を絶対に避けるべきものと考えるのか。 正しい発信をしていれば基本的には問題ないと考えるのか。 あるいは、どれだけ気をつけていても炎上は起こり得るものとして受け止めているのか。 そのあたりについて、シンポジストの先生方それぞれの考えを聞きたいと思いました。 私自身も、以前Xで炎上した経験があります。 その時の発信について、私は医学的に間違ったことを言ったとは思っていません。ただ、伝え方がよくなかった、余計なことを言ってしまった、社会的には不快に感じる人が多かった、という点については反省しています。 ですから、質問の中でも、まず自分自身の失敗を少し出した上で、「皆さんは炎上についてどう考えていますか」と聞いたつもりでした。 ところが、その意図とは少し違う方向に受け取られてしまいました。 私としては、登壇者の先生方がそれぞれ自由に意見を述べて、議論が広がることを期待していました。 しかし、実際には、私の過去の発信に対して「精神科医全体や学会に迷惑をかけている」というような趣旨の反応があり、さらに「理事長に叱ってもらう」というような流れになってしまいました。 正直に言うと、それは非常に不快でした。 もちろん、私にも反省すべき点はあります。 SNSで余計なことを言ってしまったと思うことはあります。 言い方を間違えた。 言わなくてもいいことを言った。 そういう反省はあります。 ただ、私が聞きたかったのは、私個人をどう扱うかという話ではありませんでした。 炎上という現象を、精神科医の情報発信者としてどう捉えるのか。 発信する時にどこまでリスクを取るのか。 批判を受けた時にどう向き合うのか。 専門家として、分かりやすく伝えることと、正確性を保つことのバランスをどう考えるのか。 そういう議論をしたかったわけです。 その後も、質疑応答は「学会として不適切な発信をどう取り締まるのか」という方向に進んでいきました。 私は、せっかくのシンポジウムなのに、そこに終始してしまうのは少しもったいないと感じました。 今回、私が一番考えさせられたのは、精神科医の世界の空気感です。 私はもともと内科出身です。呼吸器内科として働き、その後に精神科に移りました。 内科系の学会にも何度も参加してきましたし、精神科の学会にも参加してきました。 その中で、精神科の世界には、少し独特の空気があると感じることがあります。 もちろん、これは私の主観です。 私自身が年齢を重ねて、感覚が鈍くなっている可能性もあります。 私の側に問題があるのかもしれない。 そういう自己点検は常に必要です。 ただ、それでも、精神科の集団の中で議論している時に、話がうまく噛み合わない感覚を持つことがあります。 これは内科の時に感じた違和感とは少し違います。 患者さんからも、「精神科の先生と話が通じない」「話が噛み合わない」と聞くことがあります。 その時、これは患者さん側の状態によるものなのか、それとも医師側の聞き方や姿勢に問題があるのか。 今回の学会での体験を通じて、あらためて考えさせられました。 もちろん、精神科医全体が悪いと言いたいわけではありません。 素晴らしい先生はたくさんいます。 私自身も精神科医ですし、精神科医として日々診療しています。 ただ、精神科医が患者さんと向き合う時、あるいは社会に向けて発信する時、相手が何を聞きたいのか、どういう意図で話しているのかを丁寧に汲み取ることは、とても大事だと思います。 今回の私は、かなり腹が立った状態でこの動画を撮っています。 本来、怒ったまま動画を撮るのはあまり良くありません。 これは私のADHD的な衝動性かもしれません。 ただ、それでも今日感じたことは、今のうちに共有しておきたいと思いました。 精神科医がSNSで発信することには、大きな意味があります。 正しい知識を届けることもできますし、精神科医療への偏見を減らすこともできます。 一方で、炎上や誤解、過度な単純化といったリスクもあります。 だからこそ、「どう取り締まるか」だけではなく、 「どうすればより良い発信ができるのか」 「専門家として、社会とどう対話していくのか」 「批判や炎上をどう受け止め、どう改善につなげるのか」 そういう議論がもっと必要なのではないかと思いました。 今日は、学会から帰ってきた直後で、かなり感情が乗った話になりました。 ただ、通常の動画は通常の動画として、きちんと用意しています。 今日の19時にも、発達障害についての動画が上がりますので、ぜひそちらも見ていただければと思います。 精神科医の芳賀高浩でした。 また次の動画でお会いしましょう。 さようなら。

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