第20話 邪馬台国の発音
本当は、魏志倭人伝には「壹」の字が書いてある。ところが女王の都の名は邪馬台国だと、今ほとんどの人が「台」を書きます。台湾の「台」をなぜか書いてしまう。みんな「台」を書いてしまうけど、陳寿はもともと台湾の台なんか書いてない。陳寿が書いているのは、ここが「豆 」の、一・二・三の「一」の旧字体。ならば、これが正しいのかということが問題になるけれども、魏志倭人伝だけを見ている人はこれが正しいと思ってしまう。ところが、魏志倭人伝の元になったのは、『魏志』と『魏略』がある。それから魏志を参考にしたのが『梁書』がある。それから、後の時代に書かれたもので、『後漢書』がある。そういうものの中に、皆さんが邪馬台国と呼んでいるのが全部出てくる。 ところが、「壹」の字が書いているのは、これは魏志倭人伝の一冊だけ。魏志倭人伝一冊だけしかこの「壹」の字は書いてない。他の本は全部「臺」の字が書いてる。まあ全部というか、一冊だけ「嘉」の字になっているのがある。耶馬嘉(ヤマガ)国なんじゃないかと言われたりしてますけど、この字の草書体を読み間違えてる。他の本は全部「臺」の字が書いてある。 それなのに、これは邪馬壹国という人たちが、「ヤマイチ」国とか「ヤマイー」国が本当なんだと言ってる人たちがいる。古田武彦先生が『邪馬台国はなかった』という本を出されて、その中で書かれた。もともと「壹」の字が書いてるんだから、邪馬台国というのはなかったんだと。邪馬壹国だったんだという説を出されて、ちょっと論争になった。 それと他に、「臺」の字が書いてるのに、皆さんなぜか「台」の字を書いてしまう。ほぼ100%の人がこの台湾の「台」を書く。ところが、魏志倭人伝だけは「壹」の字だけど、他の本はほとんどが「臺」の字を使ってる。そこをしっかりと覚えておかないといけないのですけれども、なぜかそこをみんな考えずに軽んじてしまう。 どうしてそういうことが起こったのかというと、台湾の「台」の字と旧字体の「臺」の字は、江戸時代の日本には両方が伝わってきてた。当時の日本で、「台」が新字体で、「臺」は旧字体ですと教えてた。だから松下県林という人が、その理論を使って、邪馬壹国の「壹」は「臺」の字の間違いなんだと。そこで、この発表するときに、「壹」の字は「臺」の字の誤りと書いたけれども、それを、後に発表した人たちが、この「臺」の字と「台」の字が同じ字ということが固定観念であるもんで、みんなが台湾の「台」を書いてしまった。それからあと、もうみんながこの台湾の「台」を書くようになってしまった。 そして、新井白石が、この字を読むのに、当時の通訳の今村秀雄という人の発音をする、当時の中国語の音読と言われてた「音読み」をしてしまう。当時の中国語の音読が「音読み」だと当時から思われてた。だからそれを使って邪馬台国と「台」で発音してしまった。 確かに、この字の読みは「タイ」。ところが「台」の字は間違いで、他の本は全部「臺」の字ですから、「臺」の字を使わなきゃいけなかった。本当は「台」の字の発音の「ヤマタイ」と読んじゃいけなかった。本当はどういうふうに読まなきゃいけなかったのか、この読み方の論争が江戸時代から今まで続いている。 一つには、この邪馬台国ですよという荒井白石が読んだこれを、令和になっても未だに周到している。ほとんどの人は邪馬台国(ヤマタイ国)と呼んでいる。これがその説。 江戸時代から「臺」の字と「台」の字は同じ字なんだから置き換えていいじゃないか。「台」の字は新字体なんだから、それを置き換えようじゃないか。読んだら「ヤマタイ」国になりましたという説。新井白石から始まって、現在の令和まで、この「ヤマタイ」国という呼び呼び方が続いている。 それから大和(ヤマト)説っていうのがある。どういうのかというと、蕗の薹を漢字で書いたら、「臺」の字に草冠が書いてる。そして万葉仮名の中にもこれを「ト」の発音で読ませたるものがある。だから「薹」の字が「ト」で読ませるならば、草冠を取った、「臺」も「ト」で読ませていいんじゃないかという説。 だからそれからいくと、「臺」の字を書いてるけれども、「ト」の音で読ませていいんだから、これは「ヤマト」国で読むんじゃないか。これが「ヤマト」国説。畿内説の人がほとんどこれでやってる。でも、これは間違い。 確かに万葉仮名の中には、これを「ト」で読ませたのがある。でも、万葉仮名って何世紀の仮名ですか。陳寿が書いたのは西暦285年。3世紀です。3世紀には万葉仮名はない。 それだったら、なんで読まなきゃいけないのか、中国語で読まなきゃいけない。日本では同じ字と言ってる、新字体と。でも、中国では違う。もともとは、台湾の「台」と旧字体の「臺」は別字。同じ字じゃない。別字を当てはめに使っちゃダメです、絶対。そんなこと許されるはずない。別の字を持ってきちゃったら間違いの元になるから、別字は絶対置き換えちゃいけない。 それと、次に「ヤマイチ」説というのがある。もともとこの「壹」の字が使ってあると。魏志倭人伝の中には「壹」の字が使ってある。「壹」の字は「一」の字の旧字体。だったら音読みで「イチ・ニー・サン・シー」って読むんだからと。音読みでは確かにそうですよね、「イチ・ニー・サン・シー」と読んでます。例えば「イチニーサンシーゴーロクシチハチ」これが音読みでしょ?これ訓読みじゃないです。イチニーサンシーは音読みです。訓読みは、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ。これが訓読みです。イチ、ニー、サン、シーは音読み。だから、イチニーサンシーゴーロクシチハチと中国人が読んでると思い込んでる。 日本人は、要するに、漢字の読みが音読みと言っている。ということは、中国人がこう言ってますよと思い込んでる。ところが、中国人はイチニーサンシーと数えません。中国語では、イーアールサンスーウーリューチーパー。全然発音違うんです。 日本人は、ここのところを全然考えずに読んでしまうんです。だからそれで間違ってしまう。だから、「ヤマイチ」国って本当は読んじゃいけない。イチ、ニー、サンの「イチ」はこれ、あくまでも、音読みです。中国読みじゃないです。だから、この読み方もやっぱり違うということになる。 それで、「ヤマイー」国というのが出てきた。そして、次に「ヤマダイ」国というのが出た。 中国語で読んだ。これはすごいぞと。これでもう決まりかなと思ってしまうんです。ところが、これも今一つ、ちょっと足りなかった。中国語を使うけれども、漢字には、一つの文字に「音」という部分と、「韻」という部分がある。 「国」という字だったら何と言うか。日本人が音読みで読めば、「コク」です。ところが、中国人が読むと「コク」と読まない。「コワ」です。で、これの中の「ko」が「音」。「wa」が「韻」です。ということは、この韻は読まない。だから、これが借字で使ってあるのなら、「ヤマタコ」とかになったりする。でも、これは借字で使ってるんじゃない。魏志倭人伝の中では「国」という意味。だから、これは漢字で使ってる。だから「国」は、日本人は「コク」と呼んでいいし、中国人は「コア」と呼んでいい。けれども、これが借字で使ってるんだったら、「韻」は読んではいけないと、そういう問題。 ということは、中国語では、「ダイ」という発音か、「ダグ」という発音。日本の音読みでも「ダイ」。ところが、この「dai」のうちの「da」の部分が「音」。「ai」は「韻」。ということは、韻は発音しない。読まないんだから、これが「ヤマダ」になりますということ。あれは邪馬台国じゃない。邪馬臺国が正解です。 こういうのを知っておかないといけないのです。
